事務的な資料のような佇まいのこの本は、その印象に違わずストリートの調査を記録したレポートである。Atelier HOKOによって企画された「Street Report」シリーズは、街角の出来事や状況の観察・聞き込みを行い、詳細に記述する継続的なプロジェクトである。Atelier HOKOはAlvin HoとClara Kohによって2002年に結成されたユニット。人・物・空間の間を見つめ直すことで、あらゆる現象に対する好奇心を育むことを目指す。
4号目では「座席」に焦点を当てる。椅子だけでなく、広く「座ること」を範囲とした本特集では、街に設置されたベンチなど、都市計画に含まれるものばかりでなく、休息を求める者が必要に応じて生み出す「座席」に注目している。多様な座り方の紹介を通して、彼ら は高価な「デザイナーズチェア」に疑問を投げかける。「私たちは椅子をデザインしたことはないけれど、皆と同じように様々な座り方 をデザインしてきましたし、今もデザインし続けています」
ノートを模した背のテープは印刷で表現され、誌面は新聞のように荒い線数で印刷されている。網点が見えるほどの質感は画像の分解過程を可視化し、レポートが仮説段階であることを伝える。巻末に付属しているリーダーズノートについて、「読者が独自のメモを取りながら、発見の旅に出てくれることを願っている」と彼らは説明している。