事務的な資料のような佇まいのこの本は、その印象に違わずストリートの調査を記録したレポートである。Atelier HOKOによって企画された「Street Report」シリーズは、街角の出来事や状況の観察・聞き込みを行い、詳細に記述する継続的なプロジェクトである。Atelier HOKOはAlvin HoとClara Kohによって2002年に結成されたユニット。人・物・空間の間を見つめ直すことで、あらゆる現象に対する好奇心を育むことを目指す。
スンゲイ・ロード・シーフス・マーケットの「フックと穴」を取り上げた2号目では、それが作用するシステムに関心を向ける。この場所は中古品を販売するための非公式なネットワークによって形成されている。1930年代から続く市場は、かつてイギリス軍の倉庫から調達(または略奪)した余剰品や装備品の取引が行われていた。フックと穴の使用は、既存の構造物をその都度作り変える即興的で仮設的な屋台を生み出すとともに、その範囲を規制する道具でもある。流動的な建設と商人の知恵が蓄積された「フックと穴」は、応用可能性を示唆する。付録として、近所に屋台を設置するためのステップガイドが収録されている。