本書はシンガポールの街角の看板を彩る、デジタル化以前のタイポグラフィを再発見する目的で制作されたもの。Mark De WinneとVikas Kailankajeによる、「Singapore Gothic」プロジェクトの一環として、収集・紹介されている。角を丸く落としたポケットサイズのラフな装丁はチャップブックを思わせる。大衆向けに低価格で販売されたチャップブックは、本書の気軽な性格ともマッチしている。一冊ごとの分量はそれほど多くないが、シリーズ化して分冊にすることで内容の多彩さを示し、それぞれに施された表紙のカラーリングのバラエティが際立つ。4冊セット。
どの国にもストリートで流通するタイポグラフィが存在する。看板を彩る文字には、デザイナーによるお仕着せのものばかりでなく、地元の看板屋が制作したものや店主自作のものなども多く見られるだろう。店舗や施設に応じて工夫されたレタリングの数々は、看板のサイズや経済的な都合、虚栄心や目立ちたがりまで、街行く人々のようにさまざまな表情を見せる。