デンマークの哲学者であり宗教思想家のセーレン・キルケゴール(1813-55)のエッセイ『The Present Age(邦題:現代の批判)』を、翻訳者であるアレクサンドレ・ドリューの遺族らの正式な許諾を得て再出版した一冊。
19世紀前半の世相を反映して書かれたエッセイは、現代の予言書のようでもある。キルケゴールの、彼が生きた時代の不正直に対する思惟・所見や人々とメディアとの関係性についての言及は優れて現代的であり、社会的・政治的な討論の帆柱に旗を掲げてくれるものだ。しかし、現代について書かれたものではない本書をそのまま現代の文脈に置き換えることは、危険かつ誤った試みであろう。そのため本書では、Studio The Futureが気になった箇所に下線を引き、読み進める中で想起した視覚的なイメージを、ソビエト・モンタージュ理論を基礎としてテキストに合わせ構成するという形をとっている。リソグラフのモノクロ印刷による象徴的な数々のイメージは、彼の持ち出す複雑性やニュアンスを汲み取る一助となるだろう。