Pages: 176
Format: 194×134×20㎜
Bookmaking: hardcover
Language: Japanese
Publication Year: 2022
Publisher: ボーダーインク
ISBN 978-4-89982-302-5

沖縄への短い帰還

¥2640 (税込)

日本でアジアを語るなら、アジアにおける沖縄の文化的立ち位置を知ることは、もっとも重要だ。沖縄の出版物は、彼の地のガジュマルの気根のように無数に広がり力強い。小さな出版社がたくさんあり(ずいぶん減ったようではあるが)それぞれ独特な「沖縄本」を出している。そのひとつが本書の出版社であるボーダーインク。常に境界線ギリギリの発想で新しい沖縄の本作りにこだわるボーダーインクは、これまでに500点以上の本を出版している。

本書は、池澤夏樹が約10年間の沖縄ぐらしのあいだに書いてきたものをまとめたものであるが、最後に解説を寄せているのが宮里千里。本編と解説の関係がとてもよく、ヤマトの出版社にはつくることのできない「沖縄本」たらしめている。読み終えると、ルーツの違う二人の固い友情が見えてくる。また、ヤマトからの文化搾取(特に岡本太郎の例が深刻だ)や、中央と沖縄の政治の違いについて、池澤が大いに論じる本でもある。「沖縄ブーム」とは何だったか。音楽や食べものが広まり、観光客はあっという間に増え、経済効果をもたらした。沖縄に訪れた大きな変化の受け止め方は、ウチナーンチュ(沖縄の人)一人ひとりで違うだろう。

2019年「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」が行われ、開票結果は反対票が圧倒的に多かったが、それでも、辺野古の工事は進んだ。開票後、辺野古に土砂が大量投入される映像がニュースで流れた。経済と引き換えに負担を強いるという構図が繰り返されてはいないか。10年後、沖縄はどのような歴史を持っているだろう。購入者特典として、雑誌『オフショア』編集長による解説エッセイ付き。