Pages: 360
Format: 256×182×22㎜
Bookmaking: softcover
Language: Japanese
Publication Year: 2019
Designer: Tomohiro Koketsu
Publisher: photographers’ gallery
ISBN 978-4-907865-31-3

photographers’ gallery press no. 14

¥2750 (税込)

「イッツ・ア・スモールワールド」の題で2021年に開催された展覧会(KYOTO EXPERIMENT主催)があった。圧倒されるほど膨大な情報量の資料が展示され、人間が見せ物にされ展示されてきたという歴史へのストレートな問いかけを、大阪万博へ猛進する世へこのタイミングで投げかけたことの価値は計り知れない。人は、なぜ自分と違う人(あるいは文化)を、安易に搾取できてしまうのか?この号における小原真史氏による論文は、「イッツ・ア・スモールワールド」展をキュレーションした小原氏が自ら、あの展覧会を原稿化したものと言えるだろう。その中でも「6. 学術人類館における沖縄女性」はもっとも丁寧に読むべき章だ。見せ物にされた側の琉球女性は、意外にも、待遇良く儲かる人間展示への参加を喜んでいた?これを「学者や企画者に懐柔してしまった」と捉え資本主義の摂理を嘆くのか、あるいは、彼女らには懐柔せざるをえない事情があったのではないかと想像し多角的に成り行きや原因を探っていくのか。小原氏の原稿は、いつも無数のイデオロギーのなかを揺らいで生きている人間というものの本質を捉えるためのヒントを与えてくれる。

私たちは知らない土地にいったとき、中毒のように必ずカメラを向け、シャッターを押す。小原氏の論文だけではなくこの号全体を通して、写真という技術が内包する危うい非対称性を認識させてくれる。他者への好奇のまなざしが、自分にもある。それをまずは認めること。大日本帝国時代は終わったが、近隣諸地域を搾取・略奪してきたことに対する自律的な反省がなかったのが日本国である。慎重になりすぎることはない。大阪万博が近づく今、私たちは、やはり後ろを振り返るべきなのだ。photographers’galleryは写真ギャラリーであり、写真を撮ることを越えて人々が交感するための「メディア」である。購入者特典として、雑誌『オフショア』山本佳奈子さんによる解説エッセイ付き。