Alvin HoとClara Kohによって2002年に結成されたユニット、Atelier HOKOは、人・物・空間の間を見つめ直すことで、あらゆる現象に対する好奇心を育むことを目指している。本書は「Science of the secondary(二次的なものの科学)」シリーズの一環として、「窓」「ドア」「パイプ」といった家の外につながる開口部をモチーフに、人と住まいの関係を研究するものである。
彼らは指示のみを書いたハガキを友人たちに送り、回答を記載して返送するよう求めた。ハガキに書き留められたメモやイラストレーションは、どれも自由で遊び心のあるものばかりだ。不確かな線、物質的な痕跡、推測や図式。その親密さは思い立ったアイデアをすぐにハガキにして送り届けることのできる個人的な間柄によるものだろう。友人の子どもたちや彼らの学生が中心となり、ユーモアのある指示に耳を傾けているのが絵から伝わってくる。鮮やかな黄色の表紙は軽やかさを演出し、十分な厚みは、それぞれの暮らしの多彩さを感じさせる。
版元はシンガポールの〈Temporary Press〉。グラフィックデザイナーのGideonとプロダクトデザイナーのJamieの2人によって、2015年にシンガポールで設立された。活動領域はデザインに留まらず、教育、学習、研究、執筆などいくつものプロジェクトを並行している。出版物は必要に応じて手作業を加え自ら印刷製本までを行う。内容は、リサーチをベースにしたもの、社会問題やローカルな文脈を読み解くためのものなど、いままでのリトルプレスの範疇を大きく超えていく。