東京を拠点に活動する画家、八重樫ゆいの初のモノグラフ。無限の色の組み合わせ、平面と奥行きの相互作用、心象描写、キャンバスの限界を探求してきた彼女の作品は、これまでごく淡々とした手法で小さなキャンバスに描かれてきた。幾何学や抽象に還元された作品は、しばしばシステムやモジュールといったモダニズム的な概念と結びつけられることもあるが、それのみを目的化したわけではないことを、作品自体がページの連なりの中で静かに語っている。美術評論家やアーティストの寄稿を、親密な手紙のように挟み込まれた別紙の形で収録し、これらを外すことで絵画のみと向き合うこともできる。手に収まるほどのサイズの本書は作品の実寸とそう変わらない。出力が同じ印刷である写真作品や、周りの環境と共に掲載されるインスタレーションや彫刻と異なり、絵画は平面であるからこそ印刷物との落差が激しいものになる。
本書は展示風景、作品図版、そして細部という3つのセクションに分け、多面的に作品を鑑賞する経験を解体し、本のなかで再構成することで、絵画の作品集という難題にひとつの解法を示す。金沢の掲示板を使用したギャラリー「keijiban」によって発行された。










