13世紀、皇帝フリードリヒ2世はある実験を依頼した。新生児を育てる看護婦らに、決して子どもに話しかけないように指示したのだ。 外部からの影響を一切受けないとき、子どもはどんな言葉で話し始めるだろう。 本書はChristophe Lemaitreによって撮影された映像『La Lettre』(A letter)をもとにした作品集。Lemaitreは言語が人間の個体を超えて広く受け継がれていく文化であることを、人体への寄生として捉えている。物語が進むにつれ、2人の主人公の身体は伸びたり薄れたりし、最終的に二重のアイデンティティを持つ単一のキャラクターへと融合する。言語は人間によって生み出された道具であり、やがてそれは文字へ、記号へ、表象へとつながる。たしかに人間によって生み出されたはずの文化は、無意識のうちに溶け込み身体に記憶される。そして言語はやがて我々を離れ独立した存在となるだろうと予言する。
鮮やかな蛍光グリーンとスミで印刷されたカバーは折りたたまれており、広げると映画のポスターのように1枚のグラフィックとなる。リソグラフによる粒子の粗い印刷とコマ撮りのようなレイアウトは、映像が持つ質感と変形する人物の動きをなぞるかのようだ。リソグラフ印刷はフランスのRavisius Textorが担当。PromesseとTombolo Pressesから発行された。