〈ディアスポラ〉という言葉に出会う時、その良くできた言葉の裏で覆い隠されてしまう、個々の価値観の実際を感じとることがある。その言葉は、確かに多様な価値観が存在することを訴えかける上では役に立つが、当然その言葉の元で一括りにされた人々を代弁する代名詞ではない。
本書は、アーティスト、Luka Yuanyuan Yang(ルカ・ユアンユアン・ヤン)の映画作品群を特集し、長編作品『Ching-Ching』と、ディアスポラの中国コミュニティを題材にした5つの短編映画を含んでいる。この本は映画を補完する役割を果たすだけでない。再訪したサンフランシスコ、キューバでチャイナタウンのネオンサインや広東オペラの余韻を通じて、新たなレガシーを築こうとしている。それは、本の中で躍動するダンサーやパフォーマーの身体こそが現在進行形のアーカイブだからだ。彼らの記憶や言葉にできない感情は、ステップ、指先、視線に隠されているかもしれない。