中国、韓国、オランダを拠点に活動するビジュアルアーティスト、Jae Pil Eunによるタロットカードについて書かれた本。カードゲームとしてだけでなく、占いにも使用されるタロットはオカルトや神秘主義と結び付けられるが、彼は現代の魔法を、火をつけることや水を飲むことで得られる清涼感など、極めて日常的な事象と捉えている。そして同時に貨幣や所有に価値を置く競争的な態度を破壊を招く呪いと呼ぶ。一見タロットカードの説明書のようだが、魔法や呪文を考察するために複数の記事が含まれている。たとえば、メキシコ出身の詩人オクタビオ・パスによる、波と恋に落ちた少年の話「波との生活」や、グリム童話を編集したグリム兄弟による「白い蛇」を収録し、そこに現れるモチーフの象徴的意味を読み解く。
「一つ確かなのは、タロット占いの実践は社会の周辺部で口承や記録文書を通じて伝えられ、数百年にわたる迷信・神秘主義・民話によってその魅力が深まったことだ」と彼が語るように、本書は近代化以前の美術・グラフィックデザインがどのように機能していたかを考察する糸口になるかもしれない。白いハードカバーの表紙にリソグラフ印刷されたタロットカードの裏面が、伏せられるように貼り付けられている。アムステルダムで活動するグラフィックデザイナー、クレオ・ツーによる、執筆とエディトリアルを探求するプロジェクト「Off Cource」から出版された。