本書はアーティスト、Sohn youngeunによる展覧会の記録集。しかしこれらは展覧会そのものの内実ではなく、展覧会のための「オープニング」イベントの記録である。「Night」「Paper」「Glass」と名付けられた3種のパフォーマンスに合わせ、展覧会は3度開かれた（Openings）。開催前に仮装本の形で会場の片隅に置かれていた原書は、目次や画像とともに意図的に空白のページで構成されていた。その後パフォーマンスが進むにつれ、写真とメモが挿入されることによって、本は徐々に厚みを増していく。上演と本は明確に対応しており、黒い紙にグラファイトで転写されたテキストと画像を用いたパフォーマンス「Night」は、ページの間に仕組まれたカーボン紙によって読者の指紋を転写する。「Paper」では乾燥した海苔が使用されており、何が起きているのかかなり気になる。
展覧会終了後、作家は改めて本を再読／再演し、追加のテキストや画像を加え、さらに多層的なドキュメントに発展させた。斤量の薄いコート紙をラフに束ねたような造本は、即興的でありながらフィードバックを伴う制作工程を体現しているかのようである。