ポスト工業社会におけるイメージ(画像)の制作・流通・労働をめぐるオムニバス形式のエッセイ集。ニューヨークを拠点に活動するグラフィックデザイナー、Geoff Hanは、デジタル化に反して皮肉にも生産性と合理性を最大化して拡大する、中国深センの印刷会社アートロンを調査し、印刷産業の現代的意味を考える。どれだけ効率化しようと物理的な時間をスキップすることはできない。Ming Linが前書きで述べるように、「印刷立ち会い(プレスチェック)」はそれを思い知らされる潜在的な一時停止であり、同時に考えるための余白の時間である。
David BennewithやDavid Reinfurtなど寄稿陣も豪華だが、なかでも『Cyberfeminism Index』の著者Mindy Seuによるエッセイは、インターネットが機能するために払うさまざまな物理的代償(データセンターのための膨大な冷却水の浪費、バッテリーの原材料を採掘するための劣悪な労働環境など)を痛烈に批判している。最後にDena Yagoによって語られる詩の在処は、現代の技術的環境を相対化する可能性を示唆する。本書のデザインはGeoff Hanが手がけており、文字の大きさはチャールズ&レイ・イームズの『Powers of Ten』のように小さく遠ざかっていく。Laurenz Brunner主宰のSource Typeから発行された記念すべき最初の出版物。