Pages: 200
Format: 127×196㎜
Bookmaking: softcover (glue bound)
Copies: 250
Language: English
Publication Year: 2021
Designer: Czar Kristoff and gideon-jamie
Publisher: Temporary Press
ISBN 978-981-18-3096-9

New Refuge

Temporary Press
¥3850 (税込)

大小さまざまなグリッドの上を手描きの線が走る。縦横無尽に動き回る描線は、どこか急いているようにも見える。本書はフィリピン・ラグナ州を拠点に活動するアーティスト、Czar Kristoffの個展に含まれる作品として発表された。パンデミックは多くの場所を奪い去った。ライブハウスや飲食店のみならず、学校や事務用品店も同様である。Czarはクローズした地元の学校などに残された、廃棄されるテスト用紙のアーカイブをはじめた。そこには走り書きや人名、不明な単語などが残されている。人々は姿を消した。しかしその痕跡は紙の上に確かに刻まれている。数々の痕跡を拡大し、彼は細部に焦点を当てた。書き残すことは誰かへの伝達か、自分自身のための一時的な記録として行われる。コミュニケーションの糸口は彼によって発見され、本という形で読者へと繋げられる。痕跡を残した人々との交流を、往復書簡のようだと彼はいう。


当初は方眼紙にゼロックスで印刷されていたが、今回出 版されたセカンドエディションではオリジナルをリソグラフで 直接コピーしている。判型は初版より一回り小さいがリサイズすることなくそのままトリミングされている。掲載されているのが図版ではなく偶然の痕跡であるため、伝わる情報に齟齬がないと判断したためであろう。ノイジーなテクスチャーと焦点距離の変化は、紙の束として時間・空間的に体験される。ページ順はそれぞれ異なる。小口に現れる模様、ページ展開におけるリズム、どれをとっても一つとして同じものは ない。人々の軌跡が織りなすシンフォニーは、音楽の教科書を模した表紙と響き合う。場所や位相を変えながら、それぞれの本はすべて異なる交響曲を奏でる。