ロンドンを拠点に活動するアーティスト、ダニエル・イートックはこれまでにも数多くのシリーズを手がけてきた。しかしそのどれもが、素材や道具のシステムを機能させるよう定着されたものばかりだ。ゆえに彼は自らを画家ではなく「ファシリテーター」と呼ぶことを好む。作品はたしかにペイントされているが、選ばれた方法に応じて出力されるさまはまるで印刷である。大きなローラーによって引き伸ばされたアクリル絵の具の行く末を、彼は知る由もない。
偶然にも彼が使用するローラーはリソグラフのインクドラムと直径が同じである。そのことに気がついた彼と、本書の出版・デザインを手がけたギデオン・コンは、A3サイズの用紙に12種の作品を「制作=印刷」した。
作品の裏面に印刷された二人のメールは、ダニエルによるアイデア「In exchange for…」の一環である。1 年と91日をかけて行われた、リクエストとそれに応答する二人のやりとりは、わずかなすれ違いも含め嘘偽りなく掲載されている。このメールを追って読むことができるのは、12 枚の作品が折り畳まれ、冊子の形状をしているからだ。だがそのために作品は半分に分割され、もう半分の別の作品と出会い、意図していなかった形が偶然に生まれている。








